白か黒かで判断してしまう思考癖：グレーゾーンが引き起こす困難
曖昧さの中での戸惑い
私たちの社会は、時に曖昧さに満ちています。「だいたい」「まあまあ」「ケースバイケース」。こういった表現は日常的に使われますが、私にはその「グレーゾーン」を理解することが非常に難しいと感じています。物事を「白か黒か」、つまり正しいか間違っているか、良いか悪いか、可能か不可能か、という二極で捉えてしまう思考の癖があるのです。これは、日々の生活や人間関係において、様々な困難を引き起こす原因となっています。
例えば、仕事での指示です。「臨機応変に対応してください」と言われると、どのように振る舞うべきか途方に暮れてしまいます。具体的な基準や手順が示されない限り、どう動けば正解なのかが分からず、思考がフリーズしてしまうのです。結果として、何もできなくなったり、逆に極端な行動に出てしまったりすることがあります。周囲からは「融通が利かない」「マニュアル人間だ」と見られることも少なくありません。自分では、ただ指示を正確に遂行したいだけなのに、その「正確さ」の定義が曖昧であるがゆえに、困難に直面するのです。
完璧主義という側面
この「白か黒か」の思考は、完璧主義にも繋がりやすいと感じています。何かを始める際、「完璧でなければ意味がない」と考えてしまい、少しでも理想から外れる要素があると、全てが失敗だと感じてしまいます。例えば、書類作成で小さな誤字を見つけただけで、その書類全体が無価値に思えてしまい、やり直すのに膨大な時間をかけたり、時には諦めてしまったりすることもあります。
この思考パターンは、自分自身を厳しく評価することにも繋がります。「少しでもミスをしたら、自分はダメな人間だ」という極端な結論に至りやすく、自己肯定感が低くなりがちです。他者に対しても同様で、一度の失敗や期待外れの行動を見ると、その人の全てを否定的に捉えてしまう傾向があり、人間関係を構築したり維持したりするのが難しく感じることがあります。
グレーゾーンを受け入れるということ
「グレーゾーン」は、他者との関係性において特に難しい課題です。人間関係には、常に相手の感情や状況、言葉の裏側といった曖昧さが伴います。相手の言葉を文字通りに受け取りすぎてしまったり、逆にほんの小さなサインを見落としてしまったりすることで、意図しない誤解を生んでしまうことがあります。相手にとっては「言わずともわかるだろう」というような暗黙の了解が、私には全く理解できないルールのように感じられるのです。
この「曖昧さ」への対処は、常に試行錯誤の連続です。意識的に、すぐに結論を出さずに立ち止まる練習をしたり、「こういう見方もできるのではないか」と別の可能性を考えるように努めたりしています。また、信頼できる人に状況を説明し、客観的な意見を求めることも有効な手段の一つです。しかし、どうしても「白か黒か」で考えた方が、世界がシンプルで分かりやすいと感じてしまう自分もいます。その方が、不安が少なく、次に何をすべきか明確だからです。
理解を求め、折り合いをつける
この思考パターンによって生じる内面の葛藤や、社会とのズレは、しばしば孤独感を伴います。なぜ自分がこう考えてしまうのか、どうすればもっとスムーズに人と関われるのか、分からず悩む日々でした。しかし、自分のこの特性を理解しようと努める中で、これは単なる「性格」の問題ではなく、脳の特性に起因するものである可能性を知りました。それは、自分を責める気持ちを少し和らげてくれました。
全てを完璧に理解してもらうことは難しいかもしれません。ですが、自分の思考の癖を周囲に穏やかに伝えることで、誤解を減らし、より円滑なコミュニケーションを図ることができる場面も増えてきました。例えば、指示を受ける際には、具体的に手順を確認したり、質問をしたりする時間を持つようお願いする、といった工夫をしています。
完璧なグレーゾーンの理解はまだ遠い道のりですが、少しずつその存在を認識し、どうすればその中で自分らしく、そして周囲と協調して生きていけるのかを探求しています。この思考パターンと共存しながら、自分自身を肯定し、社会との接点を見つけていくことが、現在の私にとっての目標です。同じような困難を抱える方が、少しでも孤独を感じずに済むよう、互いの声に耳を傾けられる社会になることを願っています。