外からは見えない困難を抱えて:語られる日常と心の声
「静かなる叫び」では、社会の片隅にある多様な声に耳を傾けています。今回は、外見からは分かりにくい慢性的な体調不良と共に生きる、Aさん(40代、女性)にお話を伺いました。日々の生活で直面する困難、周囲との関係、そして心の内側にある思いについて、静かに語っていただきました。
診断にたどり着くまで
Aさんが体調の異変を感じ始めたのは、数年前のことだったといいます。
「最初は『疲れているのかな』くらいに思っていたんです。でも、休息しても回復しないし、だんだん様々な症状が出てきて。体に力が入らなかったり、頭がぼーっとしたり、全身に痛みを感じたり…。病院に行っても、検査では特に異常が見つからない。医師からは『ストレスでしょう』と言われることもあって、自分がどこかおかしいのではないか、気のせいなのではないかと悩みました」
症状が複数あり、波があるため、どこの科を受診すれば良いのかも分からず、彷徨う日々が続いたそうです。様々な病院を訪ね歩き、ようやく病名にたどり着くまでには長い時間を要しました。
「診断がついた時は、病気だったのかという安堵と同時に、これからどうなるのだろうという不安が押し寄せてきました。でも、自分の不調に名前がついたことで、ようやく前に進めるような気持ちにもなれたんです」
見えない困難と日々の葛藤
病気が診断されても、Aさんの抱える困難が全て解決するわけではありませんでした。外見からは健康に見えるため、周囲になかなか理解されにくいという壁に直面することになります。
「友人や職場の同僚に話しても、『元気そうだね』とか『頑張って』と言われることが多くて。悪気がないのは分かっているのですが、その言葉を聞くたびに、自分の辛さは伝わっていないんだなと感じてしまいます。どうしても無理をしてしまい、後から寝込んでしまうこともありました」
体調の良い日と悪い日があり、予定通りに物事を進めることが難しいこともしばしばです。
「急な体調不良で、楽しみにしていた約束をキャンセルしたり、締め切りがある仕事が進められなかったり…。自分を責めてしまうこともありますし、相手に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。この『見えなさ』が、一番の孤独を生んでいるように感じます」
心の支えと小さな希望
こうした困難の中で、Aさんを支えているものについても伺いました。
「同じような病気を持つ人のコミュニティに参加したことが、大きな転機でした。言葉にしなくても通じ合える、自分の経験を否定されない場所があるというのは、それまで感じていた孤独感を和らげてくれるものでした。そこで知ったセルフケアの方法や、行政のサポートについても参考にしています」
また、身近な人の理解もAさんにとって大きな心の支えとなっています。
「家族や本当に親しい友人で、病気のことを根気強く理解しようとしてくれる人が数人います。私が『今日はしんどい』と言った時に、『そうなんだね、無理しないでね』とただ寄り添ってくれる。それだけで、自分は一人ではないと感じられるんです」
Aさんは、病気と共に生きる中で、自身の価値観も変化してきたといいます。
「以前は、常にアクティブで、周りに合わせることが良いことだと思っていました。でも今は、自分の体と心に耳を傾け、無理をしない勇気を持つことが大切だと感じています。できることには精一杯取り組み、できないことは潔く諦める。そうすることで、少しずつ自分を受け入れられるようになってきたのかもしれません」
読者へのメッセージ
最後に、同じように見えない困難と向き合っているかもしれない読者へのメッセージをいただきました。
「見えない病気や体調不良は、本人にしか分からない辛さがあります。周囲に理解されずに孤独を感じることもあると思います。でも、どうか一人で抱え込まないでください。話を聞いてくれる場所や、同じ経験を持つ人と繋がれる場所がきっとあります。そして何より、ご自身の辛さを肯定してあげてください。あなたが感じていることは、決して気のせいなどではありません」
Aさんの静かで力強い言葉からは、見えない困難と共に生きる確かな足跡と、未来への希望が感じられました。自身の経験を語ってくださったAさんに、心より感謝申し上げます。